直近2回にわたって景気サイクルに関する記事を書いてきました。大局観をもって売買のタイミングを図るために必要な基礎知識として紹介しました。これを意識することで、感情に振り回されるのではなく、買い場や売り時を合理的に判断できるようになります。
しかし、具体的に景気サイクルを意識した投資って何なんだと思われる方もいるかと思いますので、今回はもう少し戦術的な話をしてみます。
セクターローテーション
景気と金利の状況によってセクター(業種)の強弱が分かれる傾向があり、下の図のようになります。日米のウェブサイトを色々調べましたが、書いていることが微妙に違っていたので、僕の独断で統合させています。

景気サイクルとの対応が分かりにくいので、下のように表現してみました。上の図と下の図で、景気と金利のタイミングが上手く合っていないところもありますが、イメージとして捉えてください。

この図はそのセクターの株が最も値上がりすると考えられる時期なので、ここは買い場ではなく売り時です。この時期をずらして仕込んでおく必要があります。
ETFローテーションはありうるのか
僕は投資初心者の人には個別株ではなくETFをおすすめしてきたので、この景気ローテーションに、あえて米国株ETFを当てはめてみたいと思います。
おさらいですが、人気のある米国株ETFとそれぞれの上位セクターをざっと並べてみましょう。
ETF
|
上位セクタ― | |||||
1位 | 2位 | 3位 | ||||
VOO | 情報技術 | 25.5 | ヘルスケア | 15.4 | 金融 | 10.9 |
VTI | テクノロジー | 24.4 | 金融 | 17.4 | ヘルスケア | 14.4 |
VYM | 金融 | 18.9 | ヘルスケア | 15.1 | 消費財 | 13.4 |
SPYD | 不動産 | 17.1 | 金融 | 15.7 | 公共事業 | 11.5 |
HDV | ヘルスケア | 21.4 | エネルギー | 20.7 | 通信 | 16.7 |
QQQ | 情報技術 | 48.4 | コミュニケーション・サービス | 19.7 | 一般消費財 | 17.1 |
(単位:%)
アメリカの景気サイクルは以下の通り。

景気拡大期の割合は驚異の86%です。第12循環は最終的には、2020年2月まで続いたことになっています。
この米国の景気循環を踏まえて、各ETFとS&P500を比較して、景気サイクルの各局面で強いETFがあるのか確認してみました。…しかし、何となく分かっていたことなのですが、人気のETFはいい具合にセクターの分散が効いているので、ほとんど景気サイクル毎で特徴は現れませんでした。一応、以下のような結果でした。
- 基本的にどの景気サイクルにおいても、S&P500より若干パフォーマンスが悪い
- 不況~回復期(2012-2014年)にS&P500よりもわずかにパフォーマンスが高いこともあった
- 基本的にどの景気サイクルにおいても、S&P500より若干パフォーマンスが悪い
- 好況期に(2016-2017年)にS&P500よりもわずかにパフォーマンスが高いこともあった
どの景気局面においても常にS&P500とほぼ同じ動き
回復期~好況期に強い(ただし、直近の値動きはGAFAMの影響が大きい)
まとめ
今回は、セクターローテーションについて取り上げました。景気と金利の局面毎に値上がりするセクターがありますが、それに飛びつくのではなく、サイクルを意識して、仕込みと利益確定をする必要があります。
また、思いつきで米国株ETFと景気サイクルの関連を検証してみましたが、イマイチな結果となってしまいました。ある程度セクター分散の利いたETFは、景気サイクルに合わせてローテーションする必要はなく、淡々とドルコスト平均法で長期投資すればよいということが再確認できました。
景気サイクルに合わせてETFを入れ替えるようなオペレーションをして、パフォーマンスを上げるには、セクター特化型ETF、債券ETF、不動産ETF、コモディティETFなどを使う必要があるでしょう。これらのETFについても、別の機会に取り上げてみたいと思います。