前回、個別のREITはよく分からないとか、日本からは直接的には投資できない海外REITに投資したいといった場合は、REITファンド(投資信託)を使うとよいという記事を書きました。
そのREITファンドはどうやら分配利回りがかなり高そう、でもリスクもありそう、ということなので、主要なREITファンドの概況を見ていきましょう。
主要なREITファンド一覧
国内外REITファンドで主要なものをピックアップしました。SBI証券および楽天証券は投資信託にレーティングをつけているので、それを参考にしています。
銘柄名 | 純資産 (億円) |
エリア | 費用 比率 (%) |
基準 価額 |
直近 分配金 (円/月) |
分配 利回り (%/年) |
トータル リターン (%/5年) |
フィデリティ-フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし) | 5,637 | 米国 | 1.54 | 2,917 | 35 | 14.4 | 7.13 |
大和-ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし) | 5,342 | 米国 | 1.67 | 2,214 | 40 | 21.7 | 4.26 |
三井住友DS-アジア好利回りリート・ファンド | 1,272 | アジア | 1.83 | 6,368 | 40 | 7.5 | 23.0 |
明治安田J-REIT戦略ファンド | 311 | 日本 | 0.99 | 8,157 | 120 | 17.7 | 19.6 |
J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型) | 3,342 | 日本 | 1.1 | 6,616 | 65 | 11.8 | 18.3 |
表中の分配利回りはあくまでも参考です。基準価額も分配金も変動します。直近ではコロナショックで分配金が下げられる傾向にあります。
年換算の分配利回りは、株式投資している人の感覚では考えられないほど高いですね。その割には、5年間のトータルリターンはそれほど高くないです。その理由が分かりますので、各ファンドの状況を見ていきましょう。
各ファンド概況
各ファンドの状況をもう少し詳しく見ていきます。
「セクター」は不動産の種類です。各REITファンドがどのような種類の不動産に多く投資しているのか確認します。コロナショック後の大雑把な傾向としては、産業施設(物流施設含む)、貸倉庫、データセンター、住宅、ヘルスケアは堅調に需要を戻してきていますが、オフィスはテレワークの普及で比較的需要の戻りが鈍いです。
「リスク」の指標としては、基準価額の推移と分配原資を見ていきます。トータルリターンが良くても、基準価額が下がり続けているファンドはちょっと心配です。また、分配原資は分配金のお金の出所を表しています。全て収益から分配金が出ているのが理想ですが、収益外、すなわちファンドが蓄えているお金を切り崩して分配金を出している場合は、注意が必要です。
フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)
海外REITファンドの中で純資産額が最大級で、SBI証券のレーティングでは★5、楽天証券では★3の米国REITファンドです。
セクター
住宅、データセンター、物流の割合が多いため、安定感があります。
リスク
パフォーマンス
設定来(2003年)基準価額:▲72% 基準価額+分配金:+204%
米国で住宅バブルが崩壊し、サブプライムローン問題が発覚し、不動産市場に大きな混乱をもたらした2007年、さらに続いたリーマンショックの2008年に大きく基準価額が下がっています。その後は緩やかに基準価額が下がっています。米国REITの基準価額は大体同じようなチャートになっています。
そういった大きな問題もありながら、分配金再投資も含めたトータルリターンでは+200%を超えています。16年で資金が3倍になります。但し、分配金を再投資する際の課税が加味されていないので、実際にはもう少し小さいリターンになります。
分配金原資

期によっては、分配金をほぼ100%収益で支払ったり、逆にほとんど収益外で支払ったりと極端な感じですが、分配対象額は増加しているので当面は大きな問題は無さそうです。コロナショック後の影響がどのように出てくるかは、次回の運用報告書で要チェックです。
ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
こちらも海外REITファンドの中で純資産額が最大級で、SBI証券のレーティングで★4、楽天証券でも★4の米国REITファンドです。
セクター
市況がほぼ影響しないヘルスケアが最上位に来ています。また、コロナ禍でも強い産業施設やデータセンターの比率が多いことも、好感が持てます。
ファンドの財務リスク
パフォーマンス
設定来(2004年)基準価額:▲78% 基準価額+分配金:+150%
フィデリティ-フィデリティ・USリート・ファンドBとほぼ同じようなチャートですが、こちらの方がパフォーマンスが50%程低いです。ただ、こちらのファンドの方が純資産がそれほど減っていないので、財務上の安定性は高そうです。
分配金原資

こちらもフィデリティ-フィデリティ・USリート・ファンドBとほぼ同じです。今後の状況は要注意です。
アジア好利回りリート・ファンド
米国以外からのエントリーです。純資産額が大きく、SBI証券のレーティングで★5、楽天証券でも★5の優良ファンドです。
国別
シンガポールとオーストラリアがほとんどですね。香港はリスクが高そうですが、割合は低いので全体としては影響は低そうです。
セクター
安定性のある産業施設の比率が最も高いです。小売が2番手に付けているのは、米国REITファンドと異なる特徴です。
リスク
パフォーマンス
設定来(2011年)基準価額:▲35% 基準価額+分配金:+185%

米国と比較すると基準価額の下げ幅が低く、高いトータルリターンを実現しています。
分配金原資

毎期50%前後を収益外から賄っており、分配対象額が漸減しているのがちょっと懸念ですね。
明治安田J-REIT戦略ファンド
純資産は低めですが、SBI証券および楽天証券のレーティングでいずれも★5の最高評価です。
セクター
オフィスがトップというのは特徴的です。オフィス賃料が下がり収益が下がることが懸念されます。ちなみに、僕はパンデミック以降はずっとテレワークで仕事させてもらえており、今後もコロナに関係なく継続してよいことになっていますが、周囲のおじさんたちの間では「やっぱりフェイス・トゥ・フェイスがいいよねぇ」という謎理論が根強く残っているので、コロナが過ぎ去ればまたすぐに満員電車の参勤交代が戻ってきそうな気はしています。そうすると、想定したよりもオフィス賃料は下がらないかもしれません。
リスク
パフォーマンス
設定来(2011年)基準価額:▲18% 基準価額+分配金:+148%
設定がサブプライムローン・リーマンショック以降なので、基準価額はそれ程下がっていません。コロナショックで初めて初期の基準価額を割り込みました。しかし、9年で約150%のトータルリターンはなかなかのものです。
分配金原資

2020年6月に発行されるはずの運用報告書が見つからないので、発行が遅れているようです。過去から収益だけで分配金を賄っていたのですが、コロナショック前にもかかわらず直近2期はほとんど収益外からの分配になっています。その後の状況は要チェックです。
J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)
SBI証券では★4、楽天証券では★5評価です。J-REITファンドの中では純資産額が最大級です。
セクター
これだったら総合型のJ-REIT買えばよい気がしないでもないです。総合型もちゃんとセクターに分解してもらいたい。
パフォーマンス
設定来(2005年)基準価額:▲33% 基準価額+分配金:+158%
2007-2008年の基準価額の急落を除けば、その後は比較的安定して横這いなのは好感が持てます。
分配金原資

収益外からの分配が多い傾向にありますが、分配対象額が非常に多く残っているので、当面は大きな問題は無さそうです。
まとめ
国内外の主要なREITファンドの状況を見てきました。
共通しているのは、優良な銘柄を選んで、分配金を再投資しながら10数年間運用すれば、サブプライムローン問題・リーマンショック、コロナショックのような大きなクラッシュを経たとしても、資金が2.5~3倍に増えているということです(課税があるので実際はもう少し少なくなりますが)。株式のS&P500インデックスファンド投資においても、15年以上運用すれば必ずプラスになるといういデータもあるので、REITファンドにおいてもやはり長期運用が重要なようです。
REITファンドは毎月分配型が人気ですが、財務的にリスクのある形式なので、定期的に運用報告書を確認することを奨めます。
運用報告書や月次レポートはネット証券のWebサイトから簡単に見れます。